2024.06.16
5 essays
haru nomura sacks and bags works exhibition
5 essays
2024年6月29日(土)—7月15日(月)
VOU / 棒
13:00-19:00|木曜定休
京都市下京区筋屋町137
神馬啓佑
坂本愛
仲村健太郎
堀井ヒロツグ
VOU
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本展「5 essays」は、草木染めのかばんブランドharu nomuraによる、VOUでの初個展です。この展示では、haru nomuraを主宰する野村春花と、その周辺の5人(ペインターや写真家、美容師やデザイナー)との対話から生まれた新作が展示されます。
haru nomuraのかばんづくりは、ユーザーが中心にあります。太い持ち手は肩や手に食い込まないように考慮され、天然素材の布や草木染めの色の表情は、さまざまなユーザーの年齢や服装にフィットするように作られています。これまで発表されてきたかばんは、野村自身が一人の使い手として使い心地の良い形やディテールを考えて、作られてきました。
一方で、草木染めには「弱さ」も存在します。化学染料とは異なり、天気や気温といった外的要因によって、全く同じ色は作れないこと、そして、褪色しやすいこと。そのため、haru nomuraでは染め直しなどを行う、販売後のかばんの定期的なメンテナンス「かばんの健康診断」が行われています。そこには、野村の他者に対する——おせっかいとも言えるほどの——ひとりひとりの生活への愛情や、かばんへの愛情があります。化学染料と比べると草木染めの色は弱く、その色は、染め直しやケアによって支えられる必要があるのです。作家として、草木染めという制作技法を選んだ野村が、色に対してだけではなく、自身のかばんへのユーザーへのケアをまなざしていることも、ある意味必然だったのかもしれません。
弱い存在であること、誰かに依存しなくては生きていけないということ、支援を必要とするということは人間の出発点であり、すべての人に共通する基本的な性質である。誰の助けも必要とせずに生きることができる人は存在しない。人間社会では、いつも誰かが誰かをサポートしている。ならば、「独りでは生存することができない仲間を助ける生物」として、人間を定義することもできるのではないか。弱さを他の人が支えること。これが人間の条件であり、可能性でもあるといえないだろうか。
村上靖彦『ケアとは何か—看護・福祉で大事なこと』より
本展で発表されるかばんは、これまでの野村が一人目のユーザーとして作るかばんとは異なり、他者との言葉を交わす過程を経て作られました。そしてその対話は、「ユーザー」と「かばん作家」の括弧を外した、ひとりとひとりが向き合うことから始まりました。「商品企画」から始まるのでもなく、また一方で「オーダーメイド」でもなく、ひとりの生に向き合って生まれたかばんたち。それは、モノから生活をつくるのではなく、生活からモノをつくる試みであり、言い換えれば生活が内包する人の弱さや、草木染が内包する色の弱さを肯定しながらモノをつくる試みでもあるのです。
「随筆」を表す”Essay”の語源はフランス語で「試みる」ことだそうです。
この空間には5つの”Essay”が、並んでいます。暮らしを描写する随筆のように気ままに自由に作られたかばんが。そして、人一人の弱さから始まり、わたしたちを新しい可能性へと開いていくかばんが。
仲村健太郎(Studio Kentaro Nakamura、展示共同企画)
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トークイベント「作品と生活のあいだ——”5 essays”ができるまで」
7月7日(日)19:30–
川良謙太(VOU)×仲村健太郎(Studio Kentaro Nakamura)×野村春花(haru nomura)
・オンライン無料配信
YouTubeのリンクはこちら https://youtube.com/live/ISncnek9rJo?feature=share
・会場での視聴・10名程度(無料)
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展示共同企画:仲村健太郎(Studio Kentaro Nakamura)
写真:堀井ヒロツグ
映像:嶋田好孝
モーション:武居泰平
撮影協力:仲村逸平
企画協力:VOU