2026.07.09

イベント

Ecotone:染織・民具・デザインの三地点

7月は、恩師たちとの3人展を秋田で開催します。

7/11(土)、7/12(日)の午前中は、私もギャラリーに在廊予定です。


土の匂いのするものに強く惹かれるようになったのは、ここ数年ことです。農具や民具、漁の網、使い道もわからない古い道具。そんなものを見つけてはスクラップし、誰に見せるでもなく眺めていました。

改めて見返してみると、その多くが東北のものでした。雪深い土地で育まれた独自の造形文化に、いつの間にか心を奪われていたのだと思います。

今回、初めて秋田で展示をする機会をいただき、「民具からの引用」という新たな視点で制作に取り組みました。モチーフに選んだのは「ばんどり」と呼ばれる背中当てです。なかでも、祝いの場で用いられた「祝いばんどり」に強く惹かれました。

実用性を備えながらも豊かな装飾性をもち、模様には願いや祈りが込められ、一点ごとに異なる素材の組み合わせがある。そこには、暮らしの中から生まれた工夫と、ものをつくる喜びが確かに宿っていました。

春、制作に先立って東北へリサーチに出かけました。同じものを見ても、自分とは異なる視点に触れたくて、民藝に造詣の深い福島・蓮笑庵の渡邉星子さんに同行をお願いしました。

山形では、東北芸術工科大学の安部里香先生にご案内いただき、致道博物館でばんどりコレクションを拝見することができました。学芸調査役の本間さんのご厚意で、お土産用として作られていたばんどりを実際に背負わせていただいたことも、忘れられない体験です。想像していたよりも小さく、そして驚くほど軽かった。その身体感覚は、その後の制作に大きな影響を与えました。

また、秋田では小松ギャラリーの小松さんに秋田人形道祖神をご案内いただきました。それは制作のヒントにとどまらず、人生の中でも忘れられない風景となりました。土地ごとに異なる神様の姿には、アニミズムの精神と、現代のキャラクターにも通じるような愛嬌やユーモアがありました。

今回の東北での時間は、「新しいものをつくらなければ」という焦りに駆られていた自分を、少しずつほどいてくれたように思います。帰りの新幹線で、「作家という肩書きに縛られず、一人の生活者として、ものをつくることを楽しみたい」とメモしました。

民具は、人々の暮らしのすぐ隣にあるものです。実用的で、素朴で、自由で、ときには少し歪んでいる。それでも確かな信念と気骨があり、時代に合わせて姿を変えながら生き続けていく。その在り方こそが、本当に良いものなのだと感じました。

今回の制作では、「装飾を楽しむ」ということを意識しました。普段は無地染めを中心に制作しているため、意図的に模様を施すことはほとんどありません。しかし今回は、ばんどりによく見られる文様を引用し、一つひとつ生地に縫い付けています。

ちょうどリサーチと同じ頃、昨年生誕120年を迎えた造形作家・宮脇綾子のアップリケ作品に触れたことも、手を動かす大きな原動力になりました。

現代における「ばんどり」の新しい解釈として、ご覧いただけたら嬉しく思います。民具を手がかりにした制作は、これからも続けてみたいと思っています。もし面白い民具をご存じでしたら、ぜひ教えてください。