2019.12.19
haru nomuraのかたちを探す旅 #4 「つくる」前の「つくる」過程
毎日ずっと好きなことをできていいね、とよく人から言われる。
染めること、手を動かすことが本当に好きなので、確かにと自分でも思う。
でも実際は、365日中お客様の手に届くものをつくっているのは150日くらいで、後の150日はかたちのリサーチ、試作、先生の仕事。残りの50日は、商品を発送したり、素材を仕入れたりと事務的な作業をしている。さらに残りの15日は、自身のものづくりの至らなさに落ち込み、反省していたりする。かたちにするまでの見えない時間の方が、実は随分と長い。
そんな、見えない時間のコラムも第4回目。
今回は、「つくる」前の「つくる」過程について書いてみようと思う。
どんなかたちにも、理由がある。
例えば、日本の着物のかたち。
日本の着物は、直線断ちの生地の縫い合わせで構成されている。洋服に比べ単純だが、解けば元の四角い布の形に戻るので、着物を解いて洗ったり仕立て直したりすることが簡単にできる。無駄なく、機能的で、理にかなったかたち。
新作のかばんは、感覚的な作り方ではなく、気になる袋をリサーチして、そのかたちの素を紐解きながら作ってみようと決めた。
追い求めていたかたちが「袋」にあったことに気づいた私は、まず、ホームセンターにある袋を集めてみた。足を運んでみつけたものもあれば、農具や漁具の専門のホームセンターから取り寄せたものもある。
中でも「フレコンバッグ」という袋に興味を持った。
フレコンバックとは「フレキシブルコンテナバッグ(Flexible Container Bags)」の略で、一般的に「フレコンバッグ」か「フレコン」と呼ばれている。大量の土砂などを入れて運んだり、移動させたり、積み上げて土留めにするのに適している袋だ。工事現場での木材入れや、大型酒店の店先で空き缶回収用に見かけることも多い。柔らかな素材(ポリプロピレン、ポリエチレン)で作られていて、使用しない時は小さく折り畳むことができる。かたちは丸型か角型で、フォークリフトやクレーンで吊り上げて移動させる。
早速、小さなアトリエの床に1tの土砂が入る袋を広げた。
フレコンの素材自体は、柔らかく軽い。縫製も複雑ではなく、トートバックの延長のように簡単。時には、1トンもの重量を支えるフレコンの丈夫さの秘密はどこになるのだろう。
観察、試作の日々が始まった。