Archive / 2025.01

2025.01.23

焚のバンダナと工芸

先日オープンした、VOUの系列店舗の<焚>のバンダナ制作の染色を担当しました。一見すると「おしゃれバンダナ」ですが、これはかなり工芸的な手仕事の熱量がある逸品です。

代表の川良さんに、はじめにこんなイメージで…と見せていただいた写真は、江戸時代に最も流行した<型染め>という伝統的な染色技法を用いたものでした。今の時代に、少量とはいえ量産品として<型染め>を選ぶ粋な精神に共感して、二つ返事でやりますと答えました。

日本の染めの模様文化は、防染(ぼうせん)の文化でもあります。防染というのは字のごとく「染料が染み込むのを防ぐことで、布に模様をつける」ことを指します。今回は防染の技術を使った藍染で白模様のものと、シルクスクリーンプリントを使った茜染で黒模様の2つの柄を制作しました。

デザインは三重野龍さん。木彫のような無骨な線のタッチが、草木染めの土っぽさとマッチして渋かっこいい。模様の糊置き・プリントは、Maison de Zansuのハッシーさん。ハッシーさんとは郵送で繰り返しサンプルのやり取りをして、ちょうどいい糊の加減を探ってもらいました。というのも、糊を置く厚さ一つで、染めるときに糊が溶け出してうまく模様が出ないのです。修正する速さと仕上がりが職人技でした。また、私一人で一枚ずつ手染めするには限界があり、お手伝いの方に来ていただいたのも良い思い出。

依頼する人、デザインする人、糊を置く人、染める人、それらを支える人。バンダナ制作にあたって、ゆるい分業・協働が生まれていて、いつの間にか私は巻き込まれていたのだ…と気がついたのは、しばらく経ってからのこと。それはかつての工芸が持っていた分業制とも違う、一つのセッションのような自由度の高い創作の渦でした。

きっと焚というスペースも、人と人がゆるく繋がりながら新しいモノが生まれていく場所になっていくのだと思います。これからの京都が楽しみになりました。

TAKI/焚 バンダナ(TAKI店内にて発売中)
Blue・インド藍、防染
Orange・インド茜×アルミ、シルクスクリーン

TAKI/焚
月火金18:00-23:00 (L.O. 22:00)
土日 13:00-23:00 (L.O. 22:00)
水曜木曜 定休
〒604-8805
京都市中京区壬生馬場町30-29

2025.01.15

haru nomura sacks and bags works POP UP in chise

2025.2.1. sat.-2.9 sun.
北白川ちせ
Open 11:00-Close 17:00
月火休
在廊日:2.1 sat. 13:00-17:00

2025年初めての展示は、北白川ちせさんで開催いたします。
定番のかばんに加え、昨年末に商品化した「Recordbag」、気まぐれに染めた春色のかばんを持っていく予定です。
全て即売ですので、そのまま身につけてお持ち帰りいただけます。

少し早い春の装いを、ぜひ探しにきてください。

DMデザインは Studio Kentaro Nakamura 。
今年から、POPUPのDMのフォーマットを揃えることで、毎回会場に足を運んでDMを集めていくのが楽しい仕掛けにしています。裏側には、Products listがまとめられているので、その時々に何の商品が見れるのか一目でわかります。

写真は、堀井ヒロツグさん。
<Record Bag>は、友人の画家の神馬さんが20年間愛用していたかばんをもとに生まれました。インド茜で染めた「茜」は、パッと目を引く鮮やかを持ちながら、深みと落ち着きのある佇まい。<Record Bag>は、haru nomuraのブランド初期を思い出させるような、植物の色を最大限に引き出した色展開です。

2025.01.05

haru nomuraと人vol.29 山口優(User)

haru nomuraの周辺の人たちにスポットを当てたインタビュー形式のコラム「haru nomuraと人」。第29回目のゲストはユーザーの山口優さんです。

山口さんは、私が思う「ものを育てるのが上手な人」の一人です。
かばんの修理を重ねていると、植物を育てるのが上手な人がいるように、ものを育てるのが上手な人がいることに気がつくようになりました。植物の古い葉が落ちて、新しい葉がすくすくと芽を出していくような。川の石が、水流で削られてだんだんと丸みを帯びていくような。

自然の移ろいに近い形で、ものも変化していくのだと、山口さんのかばんの修理をして強く感じました。まだうまく言語化できていないのですが、使用頻度や生活習慣がものの育て方の「コツ」というより、物に寄り添うような眼差しに「コツ」がありそうな気がします。今回は山口さんに、普段の暮らしやharu nomuraのかばんについてインタビューしました。

Q.普段の暮らしやお仕事について。

数年前に体調を崩してしまったという事があり、今はつながりのある場所でのボランティアスタッフや、短時間の勤務のみでのお仕事をしています。
とくに今年はそうした中で出来た大事なご縁もあり、イベントなどのお手伝いや、コミュニティスペースの運営にも積極的に関わらせていただきました。

福祉や医療的な枠組みを越えた人との繋がりや、ケア的な視点に関心を持つようになり、たとえば個人や社会の中にあって、「障害」といった言葉で表されるような部分にも、誰しもが自分自身に無理のない在り方や、社会的な関係性に繋がる部分を見直したり出来るような、きっかけがあるのではないかと感じています。

Q.haru nomuraのかばんとの出会い。

haru nomuraのかばんの事を、どこで知ったのかは覚えていないのですが。個人のブランドやメーカーにかかわらず、いろんな情報やすてきだなと思う商品がたくさんある中で、haru nomuraのかばんを選んだ視点というのは自分の中ではっきりしていた記憶があり、改めて、2020年当時の覚書を見返してみました。そのタイミングで、初めて足を運んだのが月ノ座さんでの展示会でした。その年の恵文社さんの展示で、普段使いのフレコンバックも購入し、その後も巾着袋などのアイテムがちょこちょこ仲間に加わっています。

今年は、未だに収まりが見えないコロナの流行など、
個人的にいろいろ整理のつかない出来事に、
つい気持ちがいっぱいになってしまうという事が多かった
と思います。自分自身の表現や写真とも全然向き合えず、
素直に気持ちが惹かれたのが、繕いや染め直し、
といった、布のお仕事でした。
もちろん、意識的に楽しいことに目を向けられていた
部分はあるけれど、世の中の情勢的にも、個人的にも、
疲れてどこかに穴の空いてしまったような自分の気持ちが、
そういうものに惹かれたように感じます。

持っていた古いお洋服を染め直しに出してみたり、
アンティークやヴィンテージの洋服にある、ダーニングという繕い
が持つ、声無き物語にも改めて引き込まれたりしました。
染めも繕いも、人から人へ、時間も空間も超えて継がれてきた
「もの」を通じて私が受け取っていたのは、
単なるファッション的な意味だけではなく、
特にこの一年は、何かあれば沈んで途切れそうになる
自分のこころをどこかに繋げるための、
気持ちの表れだったのだろうと感じます。

そんな今年一年の後半に、お迎えしたのが、haru nomuraさんのかばんでした。
今回、矢車附子の灰を選んだフレコンバックには、こんなフレーズがありました。
「どんなときでも支えてくれる 吊りベルトの 頼れるかばん」
きっと今の自分にとって、来年再来年、数年後の未来を歩むための、
お守りみたいな気持ちがあったのだと思います。
(2020年当時)

Q.haru nomuraのかばんについて思うこと。

かばんも巾着も、その時々でその一つばかりを使っているという時期もあれば、haru nomura以外のかばんとの組み合わせでということもあって、出番も使用頻度もそれぞれのタイミングがあるように感じます。中でもフレコンバックの方はかなり重宝していて、今年に入ってから、染め直しと取っ手の部分のお直しをお願いしました。そうして展示会などの機会に足を運んで、野村さんにふらっと報告や、お直しの相談に行こうかなあ、と思えるのもharu nomuraのかばんの楽しみの一つです。

今年に入って、ギャラリーVOUで展開されていた作品でも、自転車に取り付けて水筒などを入れられるバック、復刻版のレコードバック、中には「もっこ」(を担ぐ)というユニークすぎる作品があったり。工事現場で土砂の運搬などに使われる袋の、吊りベルトの機能をアレンジした定番のフレコンバックなどは、実際に工事現場などで使われているのを見かけることもあります。そうした現場の用途に合わせて展開をする作品のテーマも、haru nomuraのかばんを、普段使いに手に取る時の要素として、魅力的に感じています。

Q.山口さんは「ものを育てる」のが上手だなと思っています。紫の巾着の変化について教えてください。

紫の巾着は、お直しをお願いしている別の巾着の代替えで使用していたものですが、使用半年ほどで、縁の部分や表面がだいぶ白っぽくなっていました。
ある日、かばんの中の巾着をいつものように取り出したところ、「柑橘系のドリンクをこぼした後」(としか原因が思い当たらない)が黄色く染みになって、色が抜けているのに気がつきました。

普通に量販店や、思い切って買ったようなブランドの商品なら、私もたぶん「がっかり」するところなのですが、見つけた時に驚いたのと、紫の生地に黄色という取り合わせが、自分の中ですごく面白かったのを覚えています。

こうした、ものを育てるという中であらわれる一人一人の生活や個性も、haru nomuraのかばんならではのエピソードに思えます。

Q.最後に。

自分のharu nomuraのかばんとエピソードをふりかえってみて。
出て来たのがとても豊かな時間で、今回こうして書き留めておけるきっかけとなったことがとてもうれしく思います。

【Profile】
山口優(やまぐちゆう)
京都在住
・Instagram
yuy2o23

Category
Archive