「かばんの健康診断」

ブランドを立ち上げた当初から、商品が使用者に渡った「その後」のことが気がかりでした。その理由の一つとして、haru nomuraのかばんが天然の素材で出来ていることがあります。草木染めの製品は、化学染料に比べ退色しやすく、綿・麻などの天然素材は、化学繊維に比べ摩耗しやすい特性があります。そのため、かばんを使用して数年たつと、 使用者の持ち方の癖や生活スタイルによって、色褪せる、擦り切れるという傷みや変化が生じます。そこで、販売後のかばんの定期的なメンテナンス「かばんの健康診断」をはじめました。

生まれる傷みや変化は、使用者の数だけあります。haru nomuraのメンテナンスは「元どおりに戻す」ことを目的としていません。ポケットが必要な人にはポケットを付け足し、気分を一新したい人には、かばんの色を全く異なる色に染め直すこともあります。このように、使用者に寄り添うかばんに「作りなおしていく」メンテンスです。そもそも、メンテナンスという言葉は、破損したものの機能の回復・維持や、資料の復元・保存という意味で捉えますが、その語源であるmaintain(良い状態を維持する)という言葉をひもとくと、ラテン語由来の「main(手)」と「tain(保つ)」が合わさったもので、この名詞形が日本語でよく使うメンテナンス(maintenance)になりました。 そのことを理解すると、メンテナンスとは、物の状態をよりよく保つために手作業で行うさまざまな対処全般だと広く捉えても良いと思われます。

現在「かばんの健康診断」は、定期的に開かれるharu nomruaの展覧会や、オンラインショップで受け付けております。ぜひ、お気軽にご相談ください。

「育てるしかくの里がえり」

2018年3月に行った「育てるしかくの里がえり」の展示は、2013年3月に発表した育てるしかくのかばんの約5年間の成長を追ったものです。「育てるしかく」の使用者 25人にご協力頂き、必要なかばんにはメンテナンスを加え、再展示しました。展示では、メンテナンスを繰り返すことで変化していく「かばんの造形」「制作者と使用者との関係性」に着目しました。かばんによっては、5年の間に4・5回のメンテナンスを繰り返し、原型がわからなくなっているものもありました。さらにかばんの造形の変化だけでなく、使用者とのやりとりを通じて、生産者と使用者という従来の垣根を超えた関係性が生まれた実感があります。

さらに10年後20年後と、経過を追っていきたいプロジェクトです。「里がえり」の展示の際には、かばんの使用者のみなさまにご協力をいただくことがあります。その際は、どうぞよろしくお願いいたします。