2019.11.30

haru nomuraのかたちを探す旅 #2 君の作ってきたものは、全部、袋。

「君の作ってきたものは、全部、袋」
かばん教室の先生が発した、第一声であった。

目の前の机の上に広げた、haru nomuraのかばんたち。
これまでかばんを作っていると思っていたので、衝撃の一言だった。手を抜いていると言われた気持ちになって、穴があったらかばんと一緒に入りたかった。

はじめは、工業用ミシンをひたすら空踏みすることから始まった。
数日間、糸を通していないミシンで、ずっと新聞紙に針の穴を開けた。足首のスナップの緩急で、動力ミシンの針は進む。踏み込みすぎると不本意な場所まで針が進んでしまうし、恐る恐る踏み込むと効率が悪い。

先生はミシンの音を聞いていて、音が安定するまで練習に付き合ってくれた。この道50年、職人の鑑のような先生だった。おかげですぐに工業用ミシンが扱えるようになった。

お世話になったかばん教室はとても柔軟で、一般的な教室のようにカリキュラムに沿って技術を高めていくのではなく、自分の作りたいデザインをかたちにしていく中で技術を習得していく方針だった。

まず私は、学生時代に発表した「育てるしかく」を復刻するところからスタートした。自分で商品を縫ってみて、わかったことがある。「育てるしかく」はかたちの割に、手数も多く、縫いにくい。サンプルを1個作る分には苦ではないが、量産するには、あまりにも職人泣かせだ。これまで何も考えずに、縫製工場にお願いしていたが、大反省した。

改良を加えつつ、3ヶ月かけて「育てるしかく」を10個縫い上げた。自分で縫えた達成感と、お待たせしているお客さんたちにやっとお渡しできる喜びを噛み締めた。その一方、ずっと先生の一言が頭から離れなかった。

「君の作ってきたものは、全部、袋」

しかし後々、その言葉が大きなヒントとなる。

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