2023.10.01

haru nomuraと人 vol.16 野村明里(俳優)

haru nomuraの周辺の人たちにスポットを当てたインタビュー形式のコラム「haru nomuraと人」。第16回目のゲストは、俳優の野村明里さんです。

野村明里さんは、何を隠そう私の妹です。仕事は、俳優をしています。「ちょっとした表情や手足の形はそっくりだけれど、身にまとうオーラは違うね」とよく言われます。俳優という芸能の道に進んだ妹の決断を、近くで応援してきましたが、今回改めてインタビューしてみることにしました。

明里さんは、演劇の公演や稽古がない時、haru nomuraのお手伝いをしてくれています。お昼にはよくパスタを作って二人で食べます。作業の合間のコーヒーブレイクは欠かせません。なんてことない、家族の風景。これまでは、あまりお伝えしてこなかったharu nomuraの日常です。

今回は、日々の暮らしや俳優という仕事について、haru nomuraでのお手伝いについてなどインタビューしました。

Q.普段のご自身の活動や暮らしについて教えてください。

北九州と京都を拠点とするブルーエゴナクという劇団で俳優をしています。京都に住んでいますが、北九州やほかの地域で滞在して作品を作ることもあります。芸能事務所にも所属していて、映画やCMにちょこっと出演していたりもします。
稽古が忙しくないときはharu nomuraで姉のお手伝いをしています。朝起きて、家のことを済ませてアトリエに向かい、姉と一緒にお昼ご飯を食べてコーヒーを飲んで、それからかばん作りのお手伝いをします。アトリエではいつもラジオをかけっぱなしで、日々の出来事やそれぞれの次の作品のこと、家族の思い出話や最近見つけた素敵な物のこと、いろんなことを取り留めもなく喋りながら、時には黙りながら、黙々と手を動かしています。

Q.直近で出演した舞台について。

所属しているブルーエゴナクで豊岡演劇祭というフェスティバルに参加し、豊岡市の竹野地区に数週間滞在して「ゆきさきは環(めぐ)る」という作品に出演しました。地元の盆踊り振興会さんのご協力のもと観客参加型の盆踊りと竹野をリサーチして創作した演劇作品を上演しました。竹野は自然あふれる海沿いの町で、「誕生」の地とされている場所です。
遠く美しく広がる竹野浜を背景にお借りした野外劇を行いました。野外という性質上、当然風が吹き、鳥が鳴き、6時を知らせるチャイムが流れ、虫が身体にとまります。音も光もコントロールされた劇場の空間とは違う自然のなかでの上演は、とてもスリリングでありながら、同時に、わたしという俳優も風や鳥やチャイムや虫と一緒に「今ここ」に存在するだけの一人の人間なのだということを思い知らせてくれました。暑いだろうにコンクリートに座ってじっとわたしたちを見守ってくれている観客たちと同じ地平に立って、同じように日差しを感じながら、あらゆる生きものと生きていないものと共に舞台上に存在できたことを嬉しく思います。

Q.俳優という道に進んだきっかけ。

小さな頃から典型的な文学少女でした。中学生のときに体育の授業をサボって自習していた図書館で谷川俊太郎さんの「二十億光年の孤独」を読んで感銘を受け、詩に興味を持つようになりました。自分でも書いてみようと思い立ち、誰にも見せることなくひっそりと詩や短歌を書き溜めていましたが、ある日何を思ったか姉にそのヒミツを披露したのでした。そしてわたしの16歳の誕生日プレゼントに、姉はわたしが書き溜めた言葉たちを一冊の本に製本してくれました。今こうして思い出していても恥ずかしい、非常にむずがゆい出来事ではあるのですが、その時に感じた喜びが、なにか創作をして生きていきたいと思う原点になっていると思います。その後文学部に進学し、自分で脚本を書いて映画を撮ってみたいと思い自主映画製作サークルに入ります。人をまとめることが苦手だったので一向に自分の映画を作ることはなく、なぜか出演ばかりさせられているうちに演技の楽しさに目覚めました。書かれた文字でしかなかった言葉が、生きて音として発されるときに生まれる魔力に惹かれたのかもしれません。それ以来、もう十年くらい、お芝居を続けています。

Q.haru nomuraのお手伝いで感じること。

かばん作りに限ったことではないですが、なにかを作ることにはたくさんの小さな作業の積み重ねがあります。パターンを引いて、布を切って、糊張りをして、ミシンを踏んで、糸を処理して、それからやっとお湯を沸かして染料を煮出します。かばんを染めた後にも乾かしたり、また染め重ねたり、刻印をしたり、金具をつけたり、小さな小さな手作業の連続です。面倒、とまったく思わないわけでもないのですが、わたしはharu nomuraでする小さなお手伝いの作業たちをとても愛おしく思います。なるべくきれいに糸が処理できるように、なるべく姉の思い通りの色が出せるように、ひとつひとつのかばんと向き合ってお手伝いをしています。そうして出来上がったかばんがお客様の手に渡るときは何よりも嬉しく感じます。めまぐるしく進み続ける社会の中で、消費されることに留まらないものを作りたいと願います。

Q.さいごに

姉は本当にパワフルでタフな人です。いつもありがとう。これからもよろしくね。

【Profile】
野村明里(のむらあかり)
俳優。長野県出身。京都府在住。同志社大学文学部美学芸術学科卒業。
ブルーエゴナク、株式会社リコモーション所属。

【Twitter】
@nomuraakari

【HP】
ブルーエゴナク

【次回公演情報】 
ブルーエゴナク新作
2023年12月 THEATRE E9 KYOTO(京都)

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