2024.12.26

年末年始の発送業務について

年末年始の業務についてのお知らせです。
発送業務・お問い合わせは、12/27~1/5までお休みを頂戴します。
オンラインストアは、年末年始も通常通りご利用いただけます。 

写真は、先月に取材に行った舞鶴の縫製工場での一枚。
Record bagの生地裁断後に、パーツ毎に油性マジックで書かれた「ハルノムラ」が可愛らしかった。

みなさま、良いお年をお過ごしくださいね。

2024.12.01

haru nomuraと人vol.28 大田黒博人・市原綾乃 (User)

haru nomuraの周辺の人たちにスポットを当てたインタビュー形式のコラム「haru nomuraと人」。第28回目のゲストはユーザーの大田黒博人さん、市原綾乃さんです。

ひと組の可愛いらしいカップルが、Instagramでharu nomuraをタグ付けをしてくれた日のこと、今でも鮮明に思い出せます。旅するかばんの茜色を持った美しい彼女と、それを写真に写す彼。恋人を写した写真の眼差しが優しくて、胸がぎゅっとなりました。「まばゆい」という形容詞は、彼らのためにあるんじゃないかなと思ったくらい。

どこか懐かしい雰囲気を纏ったふたり。その暮らしの中に、旅するかばんがある風景。直接お会いしたことはありませんが、私の中ではもう長年知っているふたりになっていきました。

今回はおふたりについて、博人さんにインタビューしました。ポツポツと語られる、日々の暮らしも素敵です。写真も、ぜひ一枚一枚ご覧ください。

Q 普段の暮らしや仕事について教えてください。

普段は会社員として月曜日から金曜日まで働きながら、趣味で写真を撮影したり動画を作成しております。
僕の朝はまず盆栽、観葉植物の水やりから始まります。布団をたたみ洗濯を始め、彼女は朝ごはんとお弁当を作りはじめます。ご飯を食べている時は必ずめざましテレビのめざましじゃんけん TIME が始まるので、じゃんけんをするのがいつものルーティンです。といったように、なんの変哲もない至ってごく普通の暮らしをしております。

Q 休日はどんな風に過ごすのが好きですか?

僕は昔から温泉に行くことがとても好きです。なので休日は地元の友人達と温泉に入りに行きます。他にも、体育館を予約し、色んなスポーツをして学生時代に戻ったかのような時間を過ごしています。その中で友人たちと、くだらない話しで笑っている時間がとても好きです。

そして、僕には9歳の幼い弟がいます。地元の友人達を引き連れて、弟が好きなUFOキャッチャーをしに行ったり、公園で一緒に走り回って遊ぶ時間も大好きです。彼女と休日が被った日には、おいしいカレーを食べに行き、かわいい食器や家具などを見つける旅をしたりと、中身がほぼほぼ幼いことばかりなのですが、毎日、毎週、毎月、毎年と、すごく幸せな時間を過ごしているなと、この文章を書きながら改めて実感しました。


  
Q 旅するかばんとの出会い。かばんとの思い出。

初めて旅するかばんを目にしたのは今から4年前のことでした。広告で流れてきた1枚の写真に心惹かれ、その時僕は、「なんだこのかばんは、、なんて素晴らしい写真なんだ」と一瞬でharu nomuraさんのファンになりました。そこから僕は、いつかこの旅するかばんと一緒に旅をするんだと決めました。

それから3年後、僕は自分にではなく彼女にかばんをプレゼントしていました!まさか旅するかばんを知った3年後に彼女にプレゼントしているなんてその頃の僕は想像もしていなかったでしょう。かばんと共に過ごして1年5ヶ月が経ちました。いつかこのかばんと一緒に旅をするんだという僕の夢は叶っていました。彼女よ、ありがとう。

Q来年の抱負はありますか?
  
彼女や友人と一緒に、何か新しいことにチャレンジしたいと考えています。それが来年になるか、再来年になるか分からない状態ですが、必ず実現したいと思っています。もう1つは、旅行をたくさんしたいなと思っています。今年は僕も彼女も連休が被らない日が多く、2人とも大好きな旅行になかなか行けませんでした。来年は今まで行ったことないところに行き、この”旅するかばん”と一緒に新しい思い出を増やすことができたらいいなと思っています。

Q最後に
  
今回このインタビューのお話しをいただいた時は、本当に夢ではないかと思うくらいとても嬉しかったです。また、改めて自分の日常を見つめ直すきっかけにもなりました。いつか京都へ旅行に行った際には、野村さんにお会いできることを楽しみにしています!本当にありがとうございました!

【Profile】
大田黒博人 市原綾乃 
好きな歌はnever young beachの風を吹かせて

 
【Instagram】
@hirotootaguro  @ichrayn

2024.11.15

haru nomuraと人 サイドストーリー・旅するかばん【後編・旅するかばんのリネンのはなし】

haru nomuraの周辺の人たちにスポットを当てたインタビュー形式のコラム「haru nomuraと人」。2024年11月1日から<旅するかばん>は3回目のモデルチェンジをして再販となりました。今回は番外編として、haru nomuraの看板商品の<旅するかばん>に焦点を当て、発表した2015年から現在までの道のりを辿りたいと思います。

後編は、<旅するかばん>の生地「リネン」の話を中心に、モデルチェンジした<旅するかばん>のディテールについて語ります。

【後編・旅するかばんのリネンの話】

世界的服飾デザイナーのクリスチャン・ディオールは、「デザイナーにとってのリネン素材は、彫刻家にとっての大理石のようにとても高貴な素材だ」という言葉を残しました。haru nomuraの製品においても、リネンという素材は欠かせません。<旅するかばん>に始まり、flattote巾着など、展示会ではいつも目立つところにリネンの商品が並びます。

皆さんもきっとリネンと聞くと、高級な素材であるという印象を持つかと思います。身近な街の手芸店でも、綿素材や他の素材に比べて、リネン素材は1mあたりの値段が倍以上だったりします。リネンが高級である一つの理由は、リネンの生育の難しさにあります。

リネンの原料の「亜麻(フラックス)」は、寒冷な地域で栽培される一年草です。北フランスや、ベルギー、オランダなどで栽培されています。日本では、かつて北海道で盛んに栽培されていましたが、第二次対戦後その規模は減少し、今は国内ではほとんど栽培されていません。

亜麻は3月から4月に種を蒔き、100日から120日ほどで1mの背丈に成長します。非常に生命力の強い植物なので、農薬を使わないことでも知られています。ただし、糸を作る工程で薬品を使うので完全オーガニックというわけではありません。亜麻は、初夏に1日だけブルーの花を咲かせます。朝方に花が咲き、夕方には萎んでしまう儚い花だそう。その後、根本から抜き取り、そのまま畑に倒して、1ヶ月ほど寝かせて表面を腐らせ、繊維を取り出しやすくします。雨や露、風や日光を利用してカビを発生させるこの腐敗の工程を「デュー・レッティング(雨露浸水法)」と言います。また亜麻は生育が良い分、一度収穫すると土壌が痩せてしまうため、6年間の休耕が必要となる生産条件が厳しい植物でもあります。その間の6年は、その土地で小麦やジャガイモなどを作るそうです。広大な土地が必要であるというところも、亜麻栽培において重要なポイントです。名曲「亜麻色の髪の乙女」の亜麻色とは、亜麻(リネン)を紡いだ糸の色のような、黄色がかった薄茶色を指しますが、亜麻色の糸に至るまでに実はこのような大変な工程があるのです。

話は変わって、今年の夏。麻会社のKさんから<旅するかばん>の本体生地の廃盤について、連絡がありました。聞けば、中国やバングラディシュの糸の生産現場で、様々な理由で糸の製造が難しいとのこと。推測するに、旅するかばんの本体に使っている太い番手のリネン糸はニーズがない(油絵のキャンパスくらいでしょうか)ことがあるのではないかと思います。糸が作れなければ、国内で織ることもできないので、廃盤という選択だと思います。長く安定した品質で生産できるようにと選んだ生地でしたが、廃盤となると、次の選択を考えていくしかありませんでした。

2015年に発売した<旅するかばん>を、大きく変更したのは2021年のこと。それまでは、生地の耳が整っていたデザインだったものを、フリンジタイプに変更したことで、生地幅を生かしたデザインがより強調されました。綿のタグをタイベック素材に変更したのもこのタイミングでした。定番の商品だから変えずにやっていくことも大切だけれど、定番の商品だからこそより良い方に変えていくことの面白さを知りました。

今回の生地の廃盤後に、また大きくデザインを変えてしまうという可能性もあったのですが、第2モデルの素朴で緩やかなフォルムを活かす方向で話を進めていきました。Kさんと考えたのは、糸の撚り方を工夫して、第2モデルとほぼ見分けがつかない生地感にもっていくこと。細い糸を撚りあわせて、今までの太い糸を再現しました。生地に織ってしまえば、見た目にはわからないのですが、撚ったことで繊維が空気を含んでフワッと柔らかな質感が生まれました。そのおかげか、今までよりも染色の染まり具合も良くなった気がします。せっかく行き着いた今回の生地も、残念ながら、今私の手元にある限りで廃盤となります。

上の3つ並んだ藍色の<旅するかばん>の写真をご覧ください。ちょうどタイミングよく、2015年の初期モデルのユーザーさん、2021年モデルのユーザーさんが、染め直しの修理に出してくださったので、3つのモデルを並べてみました。藍色で染め直している2つと、新しく染めた1つです。2015年から使い込んだかばんが、第3モデルと変わらない見た目にまで変化するのは染め直しのメンテナンスの面白いところです。3つを細かく見比べると、ブランドとしての年月やたくさんの選択が詰まっています。

今の第3モデルも、必ず数年後には次の展開を迎えています。もちろん最大の努力はしますが、原材料費の高騰もあり、商品価格を大きく値上げせざるを得ないタイミングもきっとあると思います。第4、5とモデルチェンジを重ねながら、何より作り続けることを第一に考えています。これからも<旅するかばん>をどうぞよろしくお願いいたします。

参考文献
ジャック・ルール『リネンの歴史とその関連産業』香山学監修/尾崎直子訳、白水社、2022年。

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