2024.10.01

haru nomuraと猫 vol.27 おあげ(staff)

haru nomuraの周辺の人たちにスポットを当てたコラム「haru nomuraと人」。第27回目は、haru nomuraの看板猫でお馴染みの<おあげ>さんです。初めて人間以外の生き物にインタビューということで、「haru nomuraと人」改め「haru nomuraと猫」でお送りします。

朝、出勤するとアトリエのドアの前にいて、私の作業中はひたすら眠り、一緒に退社する。そんな不思議な関係性の猫。

今回は、おあげさんに普段のお仕事や、猫目線でのharu nomuraについてお聞きしました。


Q.普段の暮らしやお仕事についておしえてください。

俺の名前は、おあげ。油揚げという人間の食べ物に毛色が似ているから、おあげという名前になったらしい。ちなみに俺は、推定6歳。人間でいうと40歳くらいだと思う。趣味は、日向ぼっこと人間観察。

普段の仕事は、地域の見まわりをしている。空き地にどんな植物が生えているかチェックしたり、猫同士の喧嘩の仲裁、人間のケア(疲れている人間に、俺のふわふわの毛並みを撫でさせてあげる)など。

あと、副業としてharu nomuraの手伝いをしている。一応広報の担当なので、写真撮影に応じたり、アトリエに来客がある時は基本お出迎えをしている。はるちゃん曰く、俺は招き猫らしい。


Q.haru nomuraとの出会い。

俺がまだ、何も知らない子猫だった頃。季節は、梅雨明け前だったと思う。いつも通り、地域の見まわりの仕事をしていたら、茶色い液体を布に塗りたくって、物干し竿に干している人間を見た。こいつとは、目を合わせたらヤバいと思った。

正直関わりたくなかったけど、地域の安全を守る者として、不審な人間を見逃すわけにはいかないので、シャーッと威嚇した。だが、そいつは殺気だった俺を見て、懲りずにニコニコ近づいてきた。それから、要注意人物としてマークすることにした。それが、はるちゃんとの出会いだった。

その後、出会った日に見た茶色い液体は「柿渋」というもので、はるちゃんが染色という仕事をやっていることがわかった。このご時世、物価の高騰もあるし、地域の見まわりの仕事だけじゃ生活が苦しかったのもあって、haru nomuraの手伝いを始めたってワケ。はるちゃんとは種は違うけど、なんだかんだ話が合うので、なかよくやってると思う。


Q.haru nomuraのかばんについて思うこと。

猫って、かばん持たないからわかんないんだよなあ。人間ってなんでかばん持つんだろうな。haru nomuraのかばんについて思うことか、そうだなあ・・・。

染色したての、色とりどりの布が干してあるアトリエの光景を見ながら、毛繕いするのは好きかな。あと週に1回くらい、はるちゃんの妹のアカリが手伝いにきて姉妹で作業する日があるんだけれど、昔の思い出話をしながら、永遠にケラケラと笑っている。人って、何度も同じ話で笑えるんだな。いつも、その笑い声とラジオをBGMに昼寝するんだけれど、けっこう悪くないなって思ってる。


Q.これからの展望はありますか。

去年の冬頃から、俺の縄張りの地域では、空き家が解体されはじめた。はるちゃんのアトリエの周りの空き地にも、代わるがわる測量の人間が来ていたのを俺は見た。俺の読みでは、大きなマンションが建つんじゃないかって思うんだよな。あと、この頃はるちゃんが俺に「猫の手も借りたい」って嘆くようになったんだ。夜遅くまで、眼をショボショボさせてミシンを踏んでる日もある。眠い目をこすりながらアトリエから自宅に帰るはるちゃんは、猫目線から見てもかなりキてる。

そんな状況もあって、はるちゃんは「暮らしと仕事を近づけたい」らしいんだ。いろんな面で、潮時ってやつかもしれない。あるだろ?人間にもそういうタイミングが。詳しいことはわからないけど、アトリエと家を同じ場所に移すような計画が進んでいるみたいだ。「一緒に暮らさない?」ってこの前、はるちゃんにプロポーズされたしな。俺は自由と引き換えに、安心を手に入れてもいいかなって、最近ちょっと思うんだ。

Q.さいごに。
また俺の近況を報告しようと思う。今後とも、どうぞharu nomuraをよろしゅうおたのもうします。Instagramもはじめました。


【Profile】
おあげ oage

2018年、京都市東山区生まれ。
茶トラのオス。桜耳カット。
好きなアーティストはスピッツ。

・Instagram
oage_neco

2024.09.10

旅するかばんの生産につきまして

haru nomuraの代表的な「旅するかばん」。
2015年の発売からロングセラーのかばんで、数回のモデルチェンジを重ねつつ、品質の向上に努めてまいりました。

この度、主要原材料(リネン)の社会情勢による価格高騰と、生地の供給の関係で、現行モデルに使用している旅するかばんの本体生地が廃盤となりました。現在、新たに糸の撚り方を変更しながら、新規生地へのモデルチェンジを進めております。生地の表情としてはほぼ変わらないのですが(私が見てもわからないくらい)、現在のモデルより若干肌触りが滑らかになります。

オンラインストアでは現在の在庫をもちまして、一時「旅するかばん」の販売停止いたします。次の入荷は、新モデルでの販売です。

現在のモデルがお手元にすぐ欲しい方がいらっしゃいましたら、在庫限りになりますので、お早めにネットストアからご注文ください。
14日〜の恵文社さんでのPOPUPでは、通常販売いたします。 
 

2024.09.01

haru nomura と人 vol.26 嶋田好孝(カメラマン・映像作家)

haru nomuraの周辺の人たちにスポットを当てたコラム「haru nomuraと人」。
第26回目は、カメラマン・映像作家の嶋田好孝さんです。関西を拠点に、映画や広告など、映像を用いた幅広い分野でご活躍されています。

前回のVOUで開催した「5essays」の展示では、会場で流していた対話の映像を制作してくださいました。

みなさん、「5essays」の映像を今一度、流れる時間を確かめるような視点で眺めてみてください。たとえば、部屋の光の入り方、対面で座る位置、会話の息遣いや目線…切り取られた全てに嶋田さんの職人のような緻密な設計があります。これは単なる記録では生み出すことのできない時間です。

essay1神馬啓佑/画家 / Record Bag
essay2坂本愛さん/美容師/ Work Apron
essay3仲村健太郎さん/デザイナー/ Stem Bag
essay4堀井ヒロツグさん/写真家/ Soft Stone  
essay5VOU /Gallery &Shop /Mocco 

今回は、嶋田さんに普段のお仕事や、5essaysの撮影の裏側についてお聞きしました。

Q.普段の映像のお仕事について教えてください。

普段は京都や大阪を中心に撮影や映像製作をしています。日本中、時には海外にも行くことがあるので荷造りとお土産を選ぶのが得意です。

会社に勤めていたこともありましたが、今はフリーランスでお仕事させていただいています。

最近は広告の現場に呼んでいただくことが多いですが、美術大学出身ということもありアーティストの友人の作品制作の協力や、舞台で映像を流したりもします。

あまりジャンルに拘らずにいろんな所に顔を出しているせいか、自分でも何の人かよくわからなくなる時がありますが、楽しみながら日々を過ごすことが大切だと思っています。

Q.映像というメディアを選んだ理由。

元々は手で物を作りたくて大学では彫刻を学んでいましたが、自分が作ったものに対しての思い入れが強くなりすぎてしまい、冷静に作品を見れないことに悩んだ時期がありました。

そんな時にビデオカメラで撮った画を見返していると、撮影した時と全く印象が違うことに気がつきました。それがすごく新鮮で、思い入れなく他人が見ている目線と同じ目線でものが見えることに感動しました。当時の先生から「メディアを使って自分から切り離す体験をした」と言われたことを今でも覚えています。そこから独学で学びながら、どうにか今仕事としてやっている感じです。

Q.映像のどんなところに魅力を感じますか?

映像というメディアは行間を捉えるのが得意な媒体だと思っています。

例えば、目の前にいる人と話をしている時、交わされている言葉以外にも、態度やニュアンス、テンポ、また表情や仕草、気配などなど、たくさんの情報を得ています。映像はそのままの時間が切り取れてしまう性質があるので、制作する際には、できるだけ注意を払いながら観る人に、カメラを通して意図が伝わるよう心がけています。

特に好きなのは、脚本とか台本の物語性があるもの(なければ自分なりに考え)を読み解きながら撮影するのが好きです。こういった方法は集団で役割分担して作り上げる際にとても合理的なのでよく使われる方法でもありますが、色々な人の解釈が重なって、できたものは自分では想像もつかなかったものが目の前に現れるので面白いです。ぼくは結構物事を抽象的に捉えてしまうので、特にそう感じるのかもしれません。

Q.haru nomuraの「5essays」の撮影で感じたこと。映像編集で意識した点。

VOUで新作を発表をする際に、haru nomuraの周辺の人たち5名(組)と対話しながら、それぞれに新作バッグのプロトタイプを作る様子を映像にしたいと相談を受けました。対話の様子を映像にして展示の会場で流す映像とのことだったので、まずは会場でお客さんが見ることができる時間を、野村さんとデザイナーの仲村健太郎さんと一緒に決めました。2人が話したい内容を考えてくれていたので、現場ではできるだけ対話の邪魔にならないように撮影しながら、品質を保つにはどうしたらいいかと考えながら撮影に臨みました。その甲斐もあってかそれぞれの対話はとても和やかに、想定していていた時間を超えてもなかなか話が尽きないほど盛り上がっていたので、編集で短くまとめるのにとても苦労しました。仲村さんの紹介で武居さんにタイトルのモーショングラフィックで協力してもらえたりと、みんなで知恵と技術を出して作れたのがとても良かったです。

また個人的に決めていたことがもう一つあって、それは対話が起こっている空間と時間を大切にするということでした。実際の対話では参加していたみなさんが色々な話をしてくれました。例え話や影響を受けたものも紹介してくれたりました。完成した映像では泣く泣くカットした話がたくさんありました。少しでも多くの話を残したいと思った一方で、それよりも対話の中で生まれていた空気感のようなものを残したいと考えていました。想定外の質問に考え込んでいる様子や手探りで新しいものを生み出そうと失敗している様子は、限られた尺の中では一見すると不要な時間やシーンに見えますが、製品がいかに素晴らしいかを説明するためではなく、対話の痕跡を手触りのように感じられる映像を目指して制作しました。及ばなかったことや反省もないわけではないけど、面白く仕上がったんじゃないかと思っています。

Q.さいごに

会場で見ることができなかった人はharu nomuraのYouTubeにあがっていた気がするのでラジオ代わりにでもご覧いただけたら幸いです。

【Profile】
嶋田好孝 Shimada Yoshitaka

1990年兵庫県生まれ、京都市在住。
京都造形芸術大学大学院芸術研究科芸術表現専攻修了。
主にカメラをやったり助手をやったりしています。

・Instagram
@ystksmd

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